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名古屋地方裁判所 昭和43年(ワ)3175号 判決 1971年12月02日

原告 渡貫勉

右訴訟代理人弁護士 平田省三

被告 三和土木株式会社

右代表者代表取締役 木村喬

右訴訟代理人弁護士 大脇松太郎

同 大脇保彦

同 大脇雅子

主文

被告会社の昭和四三年九月一二日午後一時一〇分(実際の開催日は昭和四三年九月一一日午後一時)名古屋市東区矢田町一四丁目三二番地で開催された株主総会の、別紙目録記載の決議は不存在であることを確認する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

≪省略≫

理由

一、原告が被告会社の株主であることは当事者間に争いがない。

二、≪証拠省略≫を総合すれば、被告会社は昭和四三年八月八日不渡り手形を出し、経営困難になったので、当時の代表取締役であった原告の招集により昭和四三年八月二五日臨時株主総会を開催し、善後策を協議したこと、その際株主総会の決議を以て、次回株主総会の招集権者を株主筒井弥代志と田部井富美に指定したことがそれぞれ認められる。

三、≪証拠省略≫を総合すれば、前項記載の株主総会の決議に基づき筒井弥代志と田部井富美は昭和四三年九月一一日午後一時被告会社の臨時株主総会を開催すると称し、同年九月一〇日全株主に電報を以てそのことを通知したこと、よって昭和四三年九月一一日午後一時、株主二四名のうち田部井富美外五名の株主が出席して、木村喬、田村雲行、大久保英郎、吉田忠男、田部井富美を取締役に選任する旨決議をしたことがそれぞれ認められる。然し右集会において鳥谷敏子を監査役に選任する旨決議をしたことを認めるに足る証拠はない。

四、株主総会の招集は、取締役会の決議に基づき代表取締役がなすものであり、代表取締役の招集によらずして集合した株主の集会は株主総会ではない。従って代表取締役でない筒井弥代志および田部井富美の招集によって集合した昭和四三年九月一一日午後一時の株主の集会は株主総会ではない。なお右集会には株主全員が出席していないから、全員出席総会として株主総会の成立を認めるわけにも行かない。

そうすれば右集会においてなされた取締役選任の決議は、株主総会の決議ではないものというべきである。なお右集会の外に、昭和四三年九月一二日午後一時一〇分被告会社の株主総会が開催された事実を認めるに足る証拠はない。被告会社が登記申請の際提出した書類に昭和四三年九月一二日決議とあるのは昭和四三年九月一一日の誤記である。

五、よって別紙目録記載の株主総会決議の不存在確認を求める原告の本訴請求は理由があるからこれを認容すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 松本重美)

<以下省略>

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